人工透析ということばに対してコンプレックスや異常な警戒感を示す人がいますが、その多くは、イメージ的に人工透析はたいへんであるという印象が強いからでしょう。人工透析の最大のメリットは、腎不全をはじめとする重度慢性腎臓病の患者さんにとって、生きるための術となってくれること、これ意外にありません。
もちろん腎臓移植という方法がないわけではありませんが、こちらはかなり大掛かりな対処であり、拒否反応などの大きなリスクがあり、莫大な費用もかかってしまうので、あまり現実的とはいえないケースが多いです。そもそも治療という発想からは乖離が大きすぎます。
であるとすると、腎不全などの重度腎疾患の患者さんが生きるための道を探るとすれば、これはもう人工透析以外に方法はないのです。ですから患者さんからすれば、人工透析にはメリットもデメリットもなく、生きるためになくてはならない対処であるといえるのです。
ただ、しいてメリットを強調するのであれば、人工透析前の薬物治療などにくらべると、食事をはじめとする生活習慣の縛りが人工透析によってずいぶん緩和されるというところにあります。
何しろ、人工透析がご自身の腎臓の役割の一端を担ってくれるわけですから、人工透析にかかる時間を除けば、重度腎疾患とはいえ、非常に快適な生活を送ることができる可能性が高まるのです。これは大きなメリットです。
一方、人工透析にはデメリットもいくつか思い当たるわけですが、中でも最大のデメリットは、やはり時間的な拘束が挙げられます。腹膜透析の場合は、さらに方法が2つに分かれますが、血液透析の例でいえば、だいたい1回の人工透析に要する時間は4時間で、これを1週間に3回行うのが一般的です。
近年ではこれでもずいぶん血液透析の時間が短縮されるようになってきていますが、それにしても、少なく見積もっても毎週12時間も透析のために時間を割かなければならないという時間的制約は、かなり大きなデメリットになるといわざるを得ません。とはいえ、週12時間で、食生活を含めそれなりに快適な日々を送ることができると考えるなら、そこまで大きなデメリットとはいえないかもしれません。
それよりは、人工透析設備が完備された医療機関がない地域が多いということのほうが、特にその地域に当たる患者さんからすると、非常に大きなデメリットとなってしまうことが挙げられます。